越冬

訴えたいことが、ないんです

春遠からじ

今日は暖かかかった。

暑さにも寒さにも弱い意思軟弱な私には、こうして暖かい空気を感じると嬉しくなる。今日は春の土の匂いがした。

冬来りなば春遠からじというが、実際の春はまだまだ先な上に、寒い、あったかい、寒い、あったかいを繰り返して散々焦らした上に、春の風はびよーびよーと強いのだ。それが春だ。そして私は花粉症だ。それが春だ。

 

春といえば、昔、祖父母と一緒によくサカマチという所に行った。山の方なので、坂町と書くのかもしれない。

祖父は魚を釣りに。祖母は土筆を摘みに。私は祖母に付いて土筆をぞんざいに摘んでいたが、祖母はじっくり丹念に土手に生えている土筆という土筆を摘みまくっていた。執念の土筆摘みだった。

家に帰ると新聞紙を広げて、その上でこれまた丹念に土筆のはかまを取った。そうしてビニール袋一杯に土筆を貰って家に持って帰り、卵とじにして食べた。穂先がきちんと閉じたままのものは苦味があって美味しいのだ。春の味の思い出はこの土筆の卵とじの味だ。

あの土手は犬のうんことかおしっことか大丈夫だったんだろうかという一抹の不安と共に、祖父母の懐かしい思い出として思い出される。