越冬

訴えたいことが、ないんです

裸一貫

旅行の準備をしている。

荷造りをしていてつくづく思う。何故こんなに荷物が多いんだろう。

日数分の下着、靴下、シャツ、セーターにズボンも何枚か。パジャマ。それにハンカチ、ティッシュ、折りたたみ傘、化粧品、化粧水に乳液に、コンタクトの洗浄液に、髪の補修剤。デジカメ、それに充電器、バッテリー、コンタクトをしていくのに、眼鏡も。

こんなに要るのか。多分、いくつかは触りもせず終わるのではないか。着替えはこんなにも要るのか。旅行先の気温が読めないので、暖かい場合から思ったより寒かった場合まで、無駄に荷物が多い。

こんな時、もっと身軽な人間だったなら。最低限の下着とシャツ、靴下だけで済ませてしまうだろう。ハンカチは三枚もあればいい。化粧は下地に粉だけでいい。コンタクトと洗浄液は要らない。眼鏡さえあればいい。手荷物は、財布と携帯、ハンカチ、ティッシュだけでいい。カメラも要らない。

どうしてそういう風に生きられないのか。こんなに荷物が多いせいで、腰を悪くしては大変だとコルセットまで巻いていくのだ。

つまり、旅先でも今まで通りの生活を送ろうとするからいけないのだ。旅先なのだから、思い切って不便は不便で受け入れればいいのに、いつもと同じ生活を送ろうとしている。携帯の電池が切れることなんか心配している。

日常に縛られる者に旅は開かれないのではないか。そんな予感を抱きつつ、せっせとスーツケースに荷物を詰め込んでいる。